楽天の三木谷会長が、富裕層への課税強化を提言した経団連に対して、「元々、日本の最高税率が高いのに、さらに増税すれば、優秀な技術者もビジネスマンもスポーツ選手も日本にいなくなるだろうと、批判しました。本当にそうなのでしょうか?
経団連は、現役世代への社会保険料の負担増を軽減する為に、富裕層への課税負担増を提言していました。富裕層を除く多くの一般国民にとっては、歓迎すべき案だと思います。
それに対して、三木谷会長は、富裕層は、自分の力で高収入を得ているのだから、それに対してさらに重い課税は、富裕層の日本離れを加速するものだと懸念を表明したのでしょう。確かに、自分の富の維持だけを目的にすれば、日本から出て行く人もいるかもしれませんが、そのような人間を引き留める必要も無いように思います。
自由社会の特徴は良いアイディアを作ったり、努力したものには、それに相応しい報酬が与えられるべきだと言うことですが、それはそれである意味正しいのですが、そのことで貧富の格差がさらに拡がり、それが生む最大の問題は一部の富裕層だけで社会の富を独占していけばどのような悲惨な世界になって行くかと言うことだと思います。
強いものが勝ち、生き残る世界は弱肉強食という自然の摂理だと言われる人も多くおられます。しかし、自然界では、弱肉強食の原理と同時に生きていくことに足りるだけの獲物以上には狩らないという原理も働いているのです。人間のように際限無く富を集め、増やして行くことはしません。それだから、自然界全体の調和が保たれるのです。調和があるからこそ、狩獲れる獲物の数も確保出来るのです。それに対して、人間の欲望は際限がありません。才覚で金を得ても、その金が一生楽に暮らせるような規模になろうとも、贅沢な暮らしやビジネスへの投資を考えますと、どれだけでも富を集めたくなるものなのです。しかし、世界全体の調和を壊すほど、富が偏在してしまうと、社会が混乱し、いずれは不当なやり方での富の奪い合いになってしまい、世界は戦乱の世となり、行く着く所は、いくら金があっても、悲惨な世界しか待っていないのです。調和を度外視する金第一利己主義こそ、世界を混乱に陥れるのです。
新ハルモニア主義は世界全体の調和を維持することが、人間に幸せをもたらす鍵だと考えています。しかし、三木谷氏の主張のように、一般市民の生活がどうなろうと、自分達の富を守ることを優先する人達もいるのは確かです。また、優秀な人材は報酬の多寡で、その道を決めるというようなマネー第一主義を信じているのです。彼らは、富をいくら増やそうが幸せな生活を得られる訳では無いことにも気付いていなくて、金よりも平穏な世界の中で遣り甲斐のある仕事や生活を送ることの価値を理解していないのかもしれません。分かり易い例は、最近のスポーツ選手は、ビッグマネーを求めて日本から多くの優秀な選手が海外に出て行っていると言いますが、本当は、世界トップのレベルに挑戦したいのが一番で、報酬はたまたま世界トップレベルであれば多くの報酬を得られると言うことで、税金の問題ではありません。日本のスポーツレベルが世界トップレベルであれば、例え税率が高くとも、日本に残ってプレイするでしょう。同様に、科学者や技術者も、日本がトップレベルの場を提供出来ないから、海外に出て行くのであって、税金の問題ではありません。つまり、そのようなトップレベルで競える環境を提供出来るような国でなければ、いくら税金を下げようが優秀な人材は流出していくと思います。
そして、一番重要なことは、社会が平穏で、国民全体がある程度豊かな社会でなければ、スポーツも科学もビシネスも安心して維持していけなくなるのです。
そのような平穏な社会を維持する為には、富裕層が相応に多く負担することも長い目で見れば悪い選択ではない筈です。自分の目の前の富を維持し、増やすことしか関心の無い人間であれば、この部分が見えないのかもしれません。