NHKのプロジェクトXと言う番組で、新型コロナウィルスと医療従事者の闘いの物語と能登半島地震後の被災地での炊き出しに奮闘した人々の物語が続いてありました。この二つのドキュメントを見て、感じたことを述べたいと思います。
この数年の間に、新型コロナウィルスの蔓延や能登半島地震などにより、大きな被害を受けましたが、両被害への対応を見ていますと、日本の政府や自治体の統括的なコントロールがあまり有効に機能していないように感じます。
それなのに、何とかこれらの災害を乗り越えつつあるのは、実際、現地で実務的な活動をしている人達の頑張りがあったからだと認識出来ました。
例えば、新型コロナ禍においては、患者を受け入れた医療機関に従事する医療関係者の働きに負うことが多いのです。もともと今回のような感染爆発を想定して、医療体制が整備されてはいませんでしたので、感染拡大が進むにつれ、患者を受け入れることが出来る病院が直ぐに満杯になってしまいました。そのとき、大学病院などの大型病院では、ビニールシート等を使い、簡易的な隔離スペースとして、感染患者用のベッドを急ごしらえして、患者を受け入れるとした所が出て来ました。そして、これらの設備の整ってはいない所でも、患者の対応に、医療従事者達の並々ならぬ献身があったのです。家にも帰れず、満足に睡眠や食事もとれないような中で、患者を助けることに没頭する姿に彼らの使命感の強さに感動するばかりでした。また、その窮状に、病院内の感染症とは程遠い専門科の医師達も、協力を申し出て、院内の清掃、消毒のような作業も請け負うようになったのです。
一方、能登半島地震では、被災地に通ずる道路が崩れ、満足に救援物資を届けることが出来ない状態でした。これに対し、寺院の関係者達が備蓄していたお米でおにぎりを作り、配ったり、飲食店の料理人達が被災を免れた調理器や手持ちの食材で、炊き出しを始めました。そして、それらの人達は一致団結して、出来るだけ多く炊き出しをするグループを結成していったのでした。この輪は広がり、調理をする料理人ばかりではなく、水を運んだり、金沢などから食材を運んだり、炊き出しを避難所や孤立家屋に届ける役割をする人達も参加し、そして、被災者に、10万食にまで及ぶ所まで、活動を続けたのでした。彼らは、自分自身も被災して、店が潰れたり、とても生計を立てられるような状態ではなかったのですが、自分のことより、被災者達が二次被害で、栄養失調になるなどの目の前の危機を回避することに没頭したのでした。
一方、政府や国会では、まるで現場感覚の無い、今直ぐ手を差し伸べなくてはならない状況にあるのにも関わらず、悠長な議論で時間を浪費するばかりだったのでした。こういうときこそ、強いリーダーシップを発揮しなければならないのですが、思い切った方策を打つことも無く、それは決断を下すことで、もし失敗したらそのときは責任をとりたくないからなのか、政治家は専門家に責任をとらせようと、専門家は政治が決断しないからと、両者で責任のなすり合いが分かるような状況が続いていたと思います。また、能登半島地震のときは、政治と金の問題や選挙のことの方が気になって、身が入っていない様が見て取れました。
この国の舵をとるべき人達の危機管理能力の低さが露呈したのでした。現地で活動していた人達は目の前にある危機をどうにかしないといけないと知恵を出し、この難局を切り抜けていったのでした。結局、この国は、現場力で何とかなっているのかもしれません。
多分、政治家などは、全く臨場感を持てずに、自分は安全な所にいるので、悠長なことが出来るのでしょう。そういう意味でも、大臣クラスが現地、現場に張り付いて、その窮状の中で、策を講じるくらいのことをしないといけなかったのだと思います。