街を歩きますと、新しいリクルートスーツに身を包んだ若者と多くすれ違います。大体、数人で行動を共にする姿が多く、溌剌さと不安感が同居していて、仲間と居ることで少しでも居心地をよくしようと努めているようにも感じます。
近年、新入社員の退職率はかなり高くなっていると聞いています。一年以内も多いようですが、研修中、場合によっては入社当日に退職する人もいるそうです。このような短期では、本当に会社や仕事を理解するのは難しいと思うのですが、会社のイメージが違った、自分はこんな仕事をする為に入社した訳ではないというような理由を言われることが多いそうです。こんなに早く判断するということは、きっと入社前に、会社や仕事に関してある固定的なイメージが形作られていて、第一印象がそのイメージと異なったから、退職を決断したのでしょう。誰しもイメージを持つというのはあると思うのですが、学生のときに得た情報で作ったイメージが必ずしも正しいとはならないことの方が普通だと思います。だいたいそのイメージは職業の一般的な良い面だけで作られたものでしょうし、また学校で学んだ知識だけで、すぐその仕事を任せてもらえる程、甘くないと思います。つまり、現実の仕事を把握して、会社も把握して、ある程度仕事を任されるようになるには、短くとも数年はかかるのが一般的です。それなのに、その前に辞めてしまうということ自体、無謀な行動なのです。
私が就職するとき、尊敬する叔父さんに挨拶に行った際、彼から「最初は給料に見合うだけの仕事はできないものだ、もし少しでも役に立ちたかったら、他人(ひと)より早く出社して掃除でもしなさい。」と言われました。もちろん掃除を仕事にしろと言う訳ではありません。一人前になるまでは周りのみんなに負担をかけるのだから、時間外に掃除でもして少しは役に立ちなさいということでした。掃除をするために学校を卒業して入社した訳ではないと憤られるひともおられると思いますが、もう少し客観的に自分自身のことを理解して謙虚に自分を見直すことが大事だと言う事です。テレビドラマのようにかっこいい社会人に簡単になれる訳はありません。
少なくとも三年耐えましょう。その苦しみと辛さの先に必ず新しい自分を発見できるものです。その経験をしてから、退職を考えてもいいのではないでしょうか。